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ローカル線ガールズ

福井市を基点にあわら温泉と三国港、勝山市や永平寺へ向かう2路線を持つ「えちぜん鉄道」。一度廃線になった鉄道だったが2003年、沿線住民の嘆願によって第3セクターとして復活した。

復活と同時に採用されたのが車掌でもなく運転士でもない、女性アテンダントだ。アテンダントの仕事は、切符の車内販売やアナウンスをはじめ、沿線の観光案内をしたり、身体の不自由な人の乗降を手助けしたり、はたまた乗客の話し相手になったりで「乗客をもてなす」ことすべて。彼女たちは「客を乗せる」から「お客様に乗っていただく」という新会社の経営理念の根幹を担う最前線に立っている。

開業当初、全国で例を見ないアテンダントは、彼女たちにとっても、乗客にとっても手探りだった。「えち鉄は3セクやろ。あんたらは税金の無駄遣いや」などと乗客から言われることもあった。彼女たちも何をしたらいいのか分からない上に、乗客の質問に適切に答えることもできなかった。

先日、福井駅からえちぜん鉄道に乗った。出発時に「何かお困りのことがありましたら、遠慮なく申しつけください」とアテンダント。揺れる車内で、座っている乗客の問いかけに中腰になって笑顔で応対する。駅が近くなったらアナウンスをする。駅に着くとドアの前にすっと立ち、乗降客を見送り迎える。見ていて気持ちがいい。

「すみません、写真を撮らせてもらっていいですか」と聞いた。「今、乗務中ですので終点駅でしたら結構ですよ」。どうやら"マニア"と勘違いされてしまったか。かくかくしかじかで、と身分を明らかにした。「はい、ではお客様にご配慮いただいてなら」と、これまた笑顔で応じてくれた。

こうして自然な笑顔で、怪しげなオッサンに応対するまでの苦労は少なくなかったに違いない。現在12人が活躍しているアテンダントのリーダー、嶋田郁美さんが書いた「ローカル線ガールズ」には、これまでの彼女たちの奮闘ぶりと鉄路復活の道のりが綴られている。本当の「おもてなし」とは何か、自ら仕事を探して少しずつ実現させていったドキュメンタリーだ。

本書を読んでから乗ると、きっと楽しいローカル線の旅になる。

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