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詩集 神明の里

西本梛枝 著 山脈文庫 2000円

旅行作家の西本梛枝さんが19年ぶりに、3冊目の詩集「神明の里」(山脈文庫)を上梓した。

梛枝さんとは、取材先でよくご一緒させていただく。いつも、やさしい笑顔で、彼女の周りには人だかりができているのが常だ。昨年の春、梛枝さんは鈴鹿山脈で道に迷いビバークを余儀なくされたことがあった。その直後、梛枝さんに会うと「恥ずかしいわ。地元の人たちにも迷惑かけてしまって」と、バツが悪そうだった。何か、いたずらが見つかった女の子みたいで、かわいらしかった。

その時の話が「行きくれて 鈴鹿山中にて」という題で、詩集に収められていた。ビバーク中に、夜空を見上げ、山の生き物の息づかいに耳をそばだてている。己のことで手一杯になっておかしくない状況なのに、そう、大自然の中で無力な自分を冷静に観察しているような感じ。かといって諦めて、投げやりになっているわけでもない。無事生還しようという強い意志を感じる詩だった。

梛枝さんの実家は、出雲の寺だ。幼いころから、物もらいは頻繁に来るし、行き倒れも何人か見たそうだ。言葉は悪いが、あの世と接することに慣れているのかもしれない。だから、この世を見る目がやさしいのだと、勝手に合点した。

全国を飛び回る梛枝さんが旅先でしたためた詩も多数載っている。

(T)

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