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"乗り鉄"涙のラストラン さようなら「北陸」・後編

「やっと乗れる。ちゃんとお別れできる」。ずいぶんと待たせていただきました。けれど「もうちょっと後でもいいな」なんて、いろんな気持ちが入り混じって迎えた3月12日。寝台特急「北陸」号ラストランの日です。

「ありがとう」 長い汽笛に惜別の情緒が

さようなら「北陸」 後編

「北陸」号は始発駅の金沢駅で、同じくラストランを迎えた最後の489系ボンネット型車両で運行される急行「能登」号と並んでいました。同時に引退する両雄を見送ろうと、1500人以上の老若男女でごった返していました。

その数はJR西日本の予想をはるかに超え、列車の入線から発車、そして最後尾の車両のテールライトが闇夜に消えて見えなくなるまで、写真や脳裏に焼き付けておこうとする人たちです。

僕にとっては、大雪のため途中で運休した1月13日のリベンジ(本紙2月10日号)。日本旅行西日本営業部のツアー「寝台特急『北陸』ファイナル!!」に運よく参加でき、息子とともに金沢駅にやってきたのです。

僕たちも大勢の人々の隙間から「北陸」「能登」号が並ぶ姿をカメラで撮ろうとしましたが、その隙間がなかなか見つけられません。かろうじて撮れた写真も斜めに傾いてしまいました。けれど、その場に参加できた幸せで、失敗作でもとても愛着のある記念の写真になりました。

上野行き急行「能登」に続き、僕たちの乗る寝台特急「北陸」号も22時18分のほぼ定刻にドアが閉まりました。機関車独特の汽笛がいつも以上に長く鳴り、惜別の情緒を醸し出します。列車はゆっくりゆっくりと動き出し、最後尾の車両がホームを離れるまで速度を上げませんでした。見送る人々の「ありがとう」「さようなら」の言葉に、僕の涙腺はすっかりゆるくなっていました。

その余韻もさめぬうちに、僕らの寝台の向かいに座った30歳代のご夫婦に息子が一生懸命に語り出しました。「ボクが大きくなったら、寝台列車は走ってないから。今、お父さんと乗るねん」。参りました!

高岡、富山、魚津、糸魚川・・・停車する各駅には、深夜にもかかわらず「北陸」号のラストランを惜しむ人々が絶えません。車内も満席で、本当に廃止していいんだろうか、存続させる方法はなかったんだろうかと、感じてしまいました。

「北陸」号と同じように青い車体からブルートレインと呼ばれ長年親しまれてきた列車も、平成17年ごろから車両の老朽化や利用客の減少などを理由に、ダイヤ改正ごとに本数を減らし続け、今や毎晩走る正調ブルートレインは「北斗星」「あけぼの」「日本海」の3列車のみ。新幹線や航空機の充実による速達性の向上、格安夜行バスの隆盛など、どうしようもない現実も加わり、残念で仕方ありません。

そんなことを思いつつ「北陸」号との別れを惜しみながら翌朝6時19分、定刻に上野駅14番ホームに滑り込みました。早朝にもかかわらず、昨夜と同様に別れを惜しむ1000人近くが列車を取り囲んでいました。

上野駅で

別れを惜しんで多くの人が出迎えた上野駅

「乗り鉄」は乗れるうちに乗る。「撮り鉄」は撮れるうちに撮る。「鉄チャン」の原則を忘れてはならない時期に突入したのでしょうね。

最後になりますが今回のツアーで、企画から添乗まですべてをこなした担当の玉川淳さんにはたいへんお世話になりました。息子のワガママにもお付き合いいただき、心からお礼申しあげます。これからも同志として「乗り鉄」垂涎の企画、期待しています。

あらしん...鉄道をこよなく愛するヲタク。鉄ちゃん。一部私鉄を除き、全国の路線を乗車。鉄道好きが高じて車内販売員歴も。現在一人息子を立派にしよう?と鉄道のイベントに連れ出している。

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