体験交流型ツーリズムの手法
2007年に「人生を一瞬で変える旅に出よう」を発刊し、旅行者を「五感で感じる本物の旅」に誘った著者が、今度は旅の作り手に向け「本物の旅」の作り方について書いたのが本書。 著者の大社さんは1987年、中高年に学習型体験旅行プログラムを提供するエルダーホステル協会の日本法人設立に参画し、これまで20年にわたり、体験交流型旅行の企画や主催、地域づくりを支援する活動に携わってきた。 |
本書は20年にわたる体験交流型旅行の作り手としての経験を基に、これからの旅行の主役となる「地域」が、どのように着地型体験プログラムや滞在型プログラム作り、また、ニューツーリズムに取り組めばいいかを(1)地域主導で生まれ変わろうとする国内の旅(2)求められる本物の旅とは(3)地域に求められるマーケティング能力(4)地域の魅力を引き出す滞在型プログラム(5)地域資源の活かし方(6)地域主導の旅づくりに求められる人材(7)地域がつくる旅の未来を考える―の7章に分け解説する。
このなかで著者はまず、国内旅行の低迷の理由を「商品企画力の低さ」に求める。そして、その原因のひとつとなっている「旅行者の情報優位」は、旅行を企画し運営する主体を従来の旅行者の発地から、情報優位の着地に移管することで覆せると指摘する。
また、その際に提供すべき旅行は「本物の旅」でなければならないとし、本物の旅とは、地域にとっては「観光化を極力排除して、地域が消費されない旅」、旅行者にとっては「お客さま扱いではなく、遠くから来た知人を迎えるような交流」と位置づける。
では、どのように運べば本物の旅行を作れるのか。ポイントはマーケティングと地域の主導性にある。
マーケティングでは、マスマーケットを見るのではなく、どんな人に来てほしくて、どのような旅行をしてもらいたいかを考える。例えば、来訪者10万人という目標は日帰り客10万人なのか、1泊の客5万人なのか、10泊の客1万人なのか。こうした考え方が必要になる。
地域が主導性を持つことで、エージェントからの集客を維持しながら、エージェントに依存しない独自のチャネルによる集客やファン作りも可能になる。
地域主導は、もちろん商品作りにも発揮されなければならないが、このとき最も必要な人材がコーディネーターだという。
コーディネーターは、「地域の意図をカタチに変える」役割を担う。対象とするマーケットに適した体験交流プログラムの企画立案と商品化、講師やガイドの人選も含めたプログラムや旅行のスムーズな進行管理もコーディネーターが果たすべき役割となる。
第4章では、これらに企画づくりのポイントなども加え、具体的な滞在型プログラムを例に解説している。
(あ)