神々と歩く出雲神話
10/08/11
藤岡大拙 著 NPO法人出雲学研究所 1260円
日本最古の書物「古事記」が2012年に編さん1300年を迎える。日本の国の成り立ちを記した古事記を現代にクローズアップしようと、奈良県や三重県、宮崎県、島根県など古事記にゆかりのある地域が連携し取り組もうとしている。
古代出雲への誘い
そのうち島根県は今年度から「神話のふるさと『島根』推進事業」をスタートさせた。事業を推進する協議会のアドバイザーに名を連ねているのが本書の著者、藤岡大拙さんだ。
藤岡さんは古代史の権威であり、NPO法人出雲学研究所の理事長や斐川町立荒神谷博物館館長としても活躍している。本書は、自身の研究やフィールドワークの成果をガイドブック風にまとめている。
古事記に記載されている神話の3分の1、ヤマタノオロチや稲羽の素兎(白兎)などは島根県出雲地方を中心とした山陰が舞台。それゆえ、出雲は神話の宝庫と呼ばれるのだが、もう1つには「出雲風土記」が唯一、完本に近い形で残されていることも大きい。
例えば出雲風土記に収録されている「国引きの神話」は、大山と三瓶山に杭を立て、朝鮮半島や能登半島などの土地を縄で引っ張って島根半島を形成したというお話。この壮大な物語を作り上げた勢力が出雲に存在した証であり、藤岡さんは本書を片手に古代史散歩を勧める。