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ひとり旅ひとり酒

旅先でひとり、まちを歩いていると、ぼんやりと明かりの灯る一軒の居酒屋が。何気なく暖簾をくぐり、一杯の酒を飲む。そして、地元の酒や肴、無口な大将との無言の会話に旅情を感じる―。

暖簾の向こうに広がる旅

そんなドラマのような世界に魅力を感じていても、暖簾をくぐる勇気が・・・ということも多いのでは。京阪神エルマガジン社の「ひとり旅ひとり酒」は、西日本各地の酒場を巡った紀行文と飾らない写真で、酒場独特の大衆文化が感じさせる地域の魅力を紹介。「大人のひとり旅」への募る思いを増幅させてやまない一冊に仕上げている。

著者の太田和彦さんは、グラフィックデザイナーでありながら「酒場紀行」の達人で、著書も多い。旨い酒と肴を求めて全国を飛び回り、店主たちとの会話を楽しみながら地元の風土を体感している。

本書では、京都、金沢、境港、富山、松江、大阪、益田、鹿児島、長崎、神戸などを歩き、居酒屋からバー、小料理店、割烹、喫茶店と立ち寄った店も多彩。地元の酒と肴はもとより、酒場で出会った人たちとの会話が地域固有の風土と人情を感じさせ、旅の魅力を伝えている。酒場と人、まちが漂わせる昭和の空気感もまた本書の魅力の1つだ。

登場する居酒屋や寿司屋の大将・女将さん、バーのマスター、割烹の看板娘たち。「無口」ではなく、皆が気さくで、旅人との会話に花を咲かせてくれる。敷居は意外と低いかもしれない。ほんの少しの勇気さえあれば、暖簾の向こうに旅の大きな喜びが広がっている。

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