デフレの正体
10/08/31
1年間のシンガポール赴任を終え、帰国後まもなく本書を上梓された藻谷浩介さん。累計で3千回、多い年には年400回という驚異的な講演行脚で日本中を訪れていた藻谷さんのご講演を聞いたことのある人は少なくないだろう。実際、本紙創刊35周年の記念フォーラムでもご登壇いただいたし。 |
経済を動かすのは「人口の波」
本書は、藻谷さんの講演を加筆採録したもので、機関銃の乱射のようで無駄玉がなく、いつもメモが追いつかない記者には実にありがたい。藻谷さんの口調で改めて本書を読むと今さらながらに合点し腑に落ちることだらけだ。
乱暴に本書の問題の立て方を言ってしまうと、今の日本経済の問題は本当に、デフレや不景気なのですか?ということ。本当の原因は何なのか、誰もが知り入手できるデータから事実を浮かび上がらせる。そして、その対処法までも分かりやすく示している。
藻谷さんの講演を聞いたことがある人は知っている通り、その事実とは「日本人の加齢に伴う生産年齢人口減少」。つまり「経済を動かしているのは、景気の波ではなく人口の波」だということ。すでに始まった人口減の日本では従来のような「景気循環」は幻想だという。
では、どうすればいいのかに対して藻谷さんは「高齢富裕層から若者への所得移転」や「女性の就労と経営参加」に並んで、「外国人観光客・短期定住客の受入」を促している。
詳しくは本書を読んでいただくとして、地域づくりや観光まちづくりの行動を具体的に始める際にぜひ読んでおきたい。