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嘉登次―明治生まれの快男児

トラベルニュースat本紙でコラム「誇りへの闘い」を連載している小原健史さんが2冊目の著書を出版した。経営する佐賀県嬉野温泉・和多屋別荘の創業者で父の故・小原嘉登次氏(1906―99年)を描いた伝記「嘉登次~明治生まれの快男児」(たる出版)。裸一貫で実業界、佐賀県政へ大きな足跡を残した男の一生を小原さんは「若い人に読んでほしい」と話す。

次代に贈るメッセージ

話は、最愛の母親が亡くなったことを機に故郷の佐賀県吉田村から大阪へ出たものの1年半で無一文になり、フィリピンのダバオ島で妹の手紙を読む姿から描かれる。

失意の中帰郷するが実家はさらに窮地に陥っていた。唯一残った母が大切にしていた山林を元に木材業で一念発起、映画館事業、そして旅館業へと進出。猪突猛進、獅子奮迅の働きで「小原グループ」を形成していく。

「嬉野温泉ば日本一の温泉にする」と声高に叫んで、和多屋別荘の建設にまい進する様が面白い。大工の棟梁とやり合い、母に仕えていた番頭に叱責されながらも「別府や他の温泉地」に負けてなるもんか!と自らを、周囲を突き動かしていく。

そして嘉登次が構想時から決めていた惹句「日本に名所がまた一つ、嬉野河畔の別天地、嬉野温泉・和多屋別荘」が開業。飛行機からビラをばら巻くなど、常識にとらわれないやり方で旅館業を軌道に乗せていった。

年は下り1971年3月、三男、筆者が和多屋別荘に入社。次期経営者として筆者は、仲居の奉仕料を改革しようとして抵抗に合い、嘉登次からは「商売は生き物ぞ」と一喝され経営者としての振る舞い、生き様をたたき込まれていく。

文中、筆者が学び得た経営に関するエピソードが挟み込まれている。それはまさに、現代の我々や次代を担う若者へのメッセージだ。あとがきで小原さんは「今の日本人が最も学ぶべきものであると確信する」。

一昨年に自費出版した「気骨の流儀」を大幅に加筆。A5判。1890円(税込み)。

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