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百册百話

島根県の松江観光協会で、観光プロデューサーを務める高橋一清さんが「百册百話」を上梓した。大学を卒業してから38年間文芸春秋に勤務していた時代に係わった作品、愛読した本、忘れがたい書物をエピソードとともに紹介している。

ひとつの事実から創造力

最初に紹介している「伊藤博文と安重根」は高橋さんが文春時代、佐木隆三さんに書いてもらった小説。高校時代に足繁く通った博物館に展示されていた伊藤博文の肌着がきっかけだ。肌着は安に暗殺された時に着用していたもので、襟首から胸元にかけて赤い糸の刺繍があった。

「あれは何だろう」。高橋さんが16歳の時に抱いた疑問を佐木さんが明らかにし、伊藤博文の見方も変わったという。

このエピソードについて高橋さんは「ひとつの事実から想像力を働かせ、真実を知る。そして、相手への思いを新たにする...これが文藝の功徳である。『縁』を大切にし、相手をより深く理解し、思いやる。これが『愛』というもの」だと書く。

本書の中で、高橋さんは現在の自身の仕事を「文化の力をもってこの町、この地域を『住んでよし、訪れてよし』にするための企画を考え、実行すること」だと定義する。博物館で疑問を持った高橋少年、文春時代に抱いた「百年先の人々の心田を耕す本をつくりたい」という思いは、観光文化プロデューサーとしての今も変わらないのだと思った。

青志社、1404円。

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