里山資本主義
14/08/06
2014年の新書大賞第1位に選ばれたベストセラー「里山資本主義―日本経済は『安心の原理』で動く」。弊紙がさんざんお世話になっている日本総合研究所の藻谷浩介さんと、NHK広島取材班が同名の番組制作を経て書き下ろした。 |
経済に身体性を取り戻す
里山資本主義は造語である。リーマンショックに代表される実体のないマネー資本主義と対極をなす。身の丈にあった皮膚感覚のある労働や暮らしの中に経済を取り戻すことだと、大雑把に解釈している。
本書では事例として、ゴミ扱いだった木くずをペレットに変えて地域のエネルギー源としている岡山県真庭市の取り組みや、国を挙げて木を活用し経済的な自立に取り組むオーストリア、大量生産大量消費ではなく少量高単価で地域として利益を挙げる山口県周防大島のジャム作り、島根県邑南町の耕すシェフ...など数多くの里山資本主義のモデルを提示する。そして何より、それらを実践している人たちの肩肘はらず、しなやかに、のんびりしているさまがいい。身体と経済(資本)が分断していないから地に足がついているのだろう。
里山資本主義は地域に根づいた活動だ。結果、コミュニティーが深まり、日本が抱える少子化、高齢化などの諸問題解決の糸口までを射程に入れることができる。すべてを金銭価値に置き換えるマネー資本至上主義だけではなく、原価0円の休眠資産を再利用する道もあるのだとする本書の指摘は、観光業界にとっても示唆に富む。
角川Oneテーマ21、843円。